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国土文化研究所年報

2016年度 国土文化研究所 年次報告

国土文化研究所
所長 加納敏行

  国土文化研究所は、株式会社建設技術研究所(CTI)グループのシンクタンクとして、研究開発、地域・社会貢献活動、および社会への情報発信の3つの役割を担っています。

  研究開発につきましては、国土文化研究所は職員の皆さんが日々の業務を遂行するに際して一つの指標となりうるような、また結果として会社が中長期的に安定した経営を維持していくことができるような次世代に向けての研究開発を行っています。
 このため、人間・情報・環境・健康・エネルギー・素材などに関する基礎的な研究から、歴史・地域・文化に関する研究、さらには次世代のインフラ政策の研究などの広範なテーマでの研究(直接、事業に結びつくものばかりではありませんが)を実施しています。

 かつて下河辺淳氏は総合研究開発機構研究報告書「水と人とのかかわりに関する研究」の中で、“単一の価値観に基づく効率至上主義の国土整備が曲り角にきたこともまた確かなようである。国土の基本的なバランスが崩れつつある。国土、そして国土と人との関係における大きな転換期を迎えた現在、われわれは未来にどのような国土を残すかという岐路に立ち、その選択に重大な責任を負っている”と述べています。
 もう25年以上も前のことです。
 背景には、首都圏への一極集中と農山村や地方都市の人口流出、過疎化、少子高齢化、森林荒廃、水・土砂災害の頻発、中心市街地の衰退、自然とのかかわりの中で育まれてきた習慣や伝統の崩壊、地域固有の文化の喪失などがありました。
 さらに昨今は、人々の生きづらさの増大、ある種の欠乏感、家族との関わり・他人との関わり・地域との関わり・自然との関わりの希薄化、心のバランスをうまくとることに苦慮している人々の増大といった問題も現れてきているように思います。
 地方も行き詰っていますが、都市も行き詰っています。
 これらの問題は全て国土基盤に起因するものばかりではありませんが、人々の生活や活動を支えるさまざまな国土基盤に関するプランニングやコンサルティングを担う私たちも、業務を遂行する上で常に念頭に置いておかなければならないことであるように思います。
 『文化』とは、作家司馬遼太郎によれば“それにくるまれていて安らぐもの・楽しいもの”です。
 まさに今われわれに必要とされているのは、国土基盤に『文化』の視点を忘れないことだと思います。


  本年次報告には、2016年度に実施した7つのテーマについての研究報告を掲載しました。いずれも国土文化研究所のキャッチフレーズである『心の豊かさを醸成できる空間の創出』に向けて、研究顧問や客員研究員の方々の御協力もいただきながらその成果を纏めたものです。

  地域・社会貢献活動では、本社が所在する東京都中央区の日本橋地域の団体、企業などと協働で「江戸東京再発見コンソーシアム」を立ち上げるなど、さまざまな活動を行っています。
 2009年から有料運航を開始した「お江戸日本橋舟めぐり」は、すでに累計参加者数が1万3千人を超えています。わずか10人乗りの小さな電気ボート1隻による活動ですが、建設コンサルタント企業の社会的責任として、都市の成り立ちや防災、環境などを多くの皆さんと一緒に考える場を提供するためのより大きな活動となるよう、今後も継続していきたいと考えています。

 社会への情報発信としては、出版事業やセミナー開催などを実施しています。
 2016年には「気候変動下の水・土砂災害適応策―社会実装に向けて―」と「鉄道駅の美しさ~日本の駅、ヨーロッパの駅~」の2冊の書籍を発刊しました。また中央区役所の協力も得て「“いのち”をつなぐみんなの防災」をテーマにオープンセミナーを開催しました。

 本年次報告書を是非ご覧いただき、忌憚のない御意見をお寄せいただければ幸いです。