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国土文化研究所年報

2018年 国土文化研究所 年次報告

国土文化研究所
所長 加納敏行


 かつて国土事務次官を務めた下河辺淳氏は、総合研究開発機構研究報告書「水と人とのかかわりに関する研究」の中で、“単一の価値観に基づく効率至上主義の国土整備が曲り角にきたこともまた確かなようである。国土の基本的なバランスが崩れつつある。国土、そして国土と人との関係における大きな転換期を迎えた現在、われわれは未来にどのような国土を残すかという岐路に立ち、その選択に重大な責任を負っている” と述べています。
 もう30年近く前のことです。
 背景には、首都圏への一極集中と農山村や地方都市の人口流出、過疎化、少子高齢化、森林荒廃、水・土砂災害の頻発、中心市街地の衰退、自然とのかかわりの中で育まれてきた習慣や伝統の崩壊、地域固有の文化の喪失などがありました。
 さらに昨今は、人々の生きづらさの増大、ある種の欠乏感、家族との関わり・他人との関わり・地域との関わり・自然との関わりの希薄化、心のバランスをうまくとることに苦慮している人々の増大、といった問題も現れてきているように思います。
 これらの問題は全て国土整備に起因するものばかりではありませんが、人間が人間らしい生活を営むための基盤であるインフラストラクチャーのプランニングやコンサルティングを担う私たちも、業務を遂行する上でこういった社会の現状を常に念頭に置いておかなければならないと私は思っています。
 文化とは、作家司馬遼太郎によれば「それにくるまれていて安らぐもの・楽しいもの」です。
 また作家塩野七生は「文明は人を緊張させるが、文化は人を安らかにする」と述べています。
 「ものの豊かさ」から「こころの豊かさ」への大きな転換期を迎えた今、国土文化研究所は、株式会社建設技術研究所(CTI)グループのシンクタンクとして、『心の豊かさを醸成できる空間の創出』を目指した活動を行っています。

業務の柱は次の4つです。

▪ 研究開発
 研究開発につきましては、国文研は職員の皆さんが日々の業務を遂行するに際して一つの指標となりうるような、また結果として会社が中長期的に安定した経営を維持していくことができるような、次世代に向けての研究開発を行っています。
 このため、人間・情報・環境・健康・エネルギー・素材等に関する基礎的な研究から、歴史・地域・文化に関する研究、さらには次世代のインフラ政策の研究などの、広範なテーマでの研究(直接事業に結びつくものばかりではありませんが)を実施しています。
 本年次報告書には、2018年度に実施した11件のテーマについての研究報告を掲載しました。いずれも国文研のキャッチフレーズである『こころの豊かさを醸成できる空間の創出』に向けて、研究顧問や客員研究員の方々の御協力をいただきながら、その成果を纏めたものです。


▪ 地域・社会貢献活動
 地域・社会貢献活動では、本社が所在する東京都中央区の日本橋地域の団体、企業などと共働で「江戸東京再発見コンソーシアム」を立ち上げるなど、様々な活動を行っています。
 2009年から有料運航を開始した「お江戸日本橋舟めぐり」は、すでに累計参加者数が1万4000人を超えています。わずか10人乗りの小さな電気ボート1隻による活動ですが、建設コンサルタント企業の社会的責任として、都市の成り立ちや防災、環境などを多くの皆さんと一緒に考える場を提供するためのより大きな活動となるよう、今後も維持していきたいと考えています。


▪ 社会への情報発信
 社会への情報発信としては、出版事業やセミナー開催などを実施しています。2018年には「深化する水力発電」(仮称)の発刊に向けた執筆活動を行いました。また「インフラをとことん楽しむ方法~インフラツーリズムの魅力を探る~」をテーマにオープンセミナーを開催しました。


▪ 人材育成
 建設コンサルタントの若手技術者の育成は喫急の課題です。建設コンサルタントの担い手をこれからもしっかりと確保していくためには、会社の安定経営に向けた環境整備に取り組んでいくことも大切ですが、入社してからの技術者を育成していくためのプログラムを的確に講じていくことも極めて重要です。
 このような背景から、国文研では2018年より25歳から35歳の若手技術者を対象にした人材育成プログラム「国土文化カフェ~未来を担うエンジニア入門講座~」を開始しました。
 
 なお詳細につきましては本報告に記しています。御一読いただければ幸甚です。