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2023.08.28

【AI技術による洪水リスクの予測の高度化】 洪水予測システムモデルのリアルタイム自動学習機能を開発しました。

技術・研究

 当社は、充分な観測データがない中小河川におけるリスク情報の効率的な精度向上を目的に、洪水予測システムを運用しながら、運用中に発生する新たな洪水の観測データを活用した自動学習機能を開発しました。この技術によって、中小河川や上流域を含む流域全体のリスク情報の精度向上を迅速に行うことができるようになります。

1.背景
 洪水予測システムのモデルの精度向上は、膨大なケースの検証作業と各河川の特性を踏まえた高度な技術判断を要するため、これまで大河川や都市域を抱える中下流区間などに限られ、中小河川や上流域での対応は難しい状況でした。
 近年の異常洪水では、中小河川等での氾濫被害が発生するケースが多く、観測データが少ない河川においても、精度の高いリスク情報の提供が重要となってきています。

2.開発した技術の概要と効果
(1)開発した技術の概要
①洪水予測モデルの自動学習

  • IoT機器等による河川水位の観測データを活用した自動学習機能を開発しました(図1)。
  • 自動学習機能では、観測された河川水位データを用いてAI技術により洪水終了後速やかに洪水予測モデルの最適なパラメータを設定できるようにしました。

 

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図1 自動学習機能の導入のイメージ

 

②RisKmaと連携した洪水予測モデルの自動学習機能の組み込み 

  • 開発した自動学習機能を組み込んだ洪水予測モデルを、当社が自治体向けに提供している『RisKma』(水災害リスクマッピングシステム)の機能の一つとして取り入れ、予測雨量、河川水位、浸水リスク等のリアルタイム水災害監視機能と併せて実装できるようにしました。

(2)開発した技術の効果(自動学習機能による洪水予測の高精度化及び効率化)

  • IoT機器等を通じて新たに取り込まれる洪水の観測データを用いた自動パラメータ最適化により、洪水予測精度が向上できます(図2)。
  • 自動学習機能により、洪水予測モデルの高精度化に関する一連の検証や改良プロセスの迅速化が図れます。
  • 過去の観測データが少ない上流域や支川に位置する観測所、近年設置が進められてきた危機管理型水位計などにおいても、洪水予測モデルの一般値などの暫定パラメータで予測システムを運用開始し、洪水発生後に自動で精度向上することが可能となります。

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図2 追加学習による再現精度向上

3.今後の展望
 水害リスク情報の空白エリアへの導入を推進するとともに運用上の課題解決を図り、水害リスク情報の提供による社会全体の水防災への貢献を目指します。