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  • 低コストでより広範囲の貯水位で機能を発揮できる新しい洪水吐き「サイホン放流設備」を共同開発しました。

2023.09.11

低コストでより広範囲の貯水位で機能を発揮できる新しい洪水吐き「サイホン放流設備」を共同開発しました。

技術・研究

 当社は、一般財団法人ダム技術センター及び豊国工業株式会社と吐口制御によるサイホン放流設備の共同開発を行いました(特許審査中:「ダムの洪水吐き装置」(出願番号2019-209304))。これにより、これまで小規模流量(利水活用)に限定されていたサイホン放流設備は、大規模流量(治水利用)への適用が可能となりました。

1.背景
 近年の気候変動や洪水の激甚化により、ダムの治水機能増強の必要が高まっています。しかし、放流設備増設などのダム再開発工事(堤体削孔、トンネル洪水吐きなど)は、工事費が大きく、ダム運用に影響を及ぼすため、実現に向けてはダム本体を大幅に改造することなく、安価かつ効率的に治水放流能力を向上させることが課題となっていました。

2.開発した技術の概要(サイホン放流設備)
 管の両端の水圧差(重力)を利用して管内に水を流す仕組みであるサイホン理論を活用した「吐口制御式サイホン放流設備」の技術開発を行いました。この吐口制御式サイホン放流設備」の技術的な特徴は以下の通りです(図1、図2参照)。

  • 流況の乱れなどの水理的課題により流量規模の小さい利水放流設備への適用に限定されていた従来のサイホン放流設備を活用し、吐口部にゲート(吐口ゲート)を設置する。
  • 予め管内を充水することで、迅速なサイホン流の形成ならびに流況の安定化を実現し、流量規模の大きい治水放流設備(洪水吐き)に適用させる。

photo1.png   図1 堤体削孔案とサイホン放流設備案の比較  

   

photo2.png図2 サイホン放流設備の放流特性

 この技術は、複雑な水理現象を有することから流況の乱れの要因となる空気連行や振動の要因となる負圧領域に着目して水理模型実験を行い(図3参照)、安全(負圧-3m以下)に放流できる条件を明らかにしました(図4参照)。

photo3.png  図3 水理模型実験の状況

photo4.png

図4 水理模型実験による適用範囲の確認

 

3.今後の展望
 今後は、本研究結果を踏まえて、「吐口制御式サイホン放流設備 検討要領(案)」を、2024年度を目途にとりまとめます。