PROJECTプロジェクト紹介

"水を貯めない"環境にやさしい治水専用ダム

所在地: 信濃川水系浅川(長野県長野市)
期 間: 1992年~2016年
発注者: 長野県長野建設事務所 

長野市浅川ダムプロジェクト

浅川ダムは、長野市北部飯綱山が源となる延長約20kmの一級河川・信濃川水系浅川に建設されたダムです。長野市の新興市街地を流れ、千曲川に合流する中小河川でありながら、流れは急峻で、水害が頻発していました。そこで、洪水調節のみを目的とする高さ53メートルの重力コンクリート形式の流水型ダムとして、2017年に完成した長野県営の治水専用ダムです。
ただし、浅川ダムの建設が行われるまでには右往左往の経緯がありました。2001年2月、当時の田中康夫長野県知事が「脱ダム宣言」を表明し、2002年6月の県議会において工事中止を表明したのが浅川ダムでした。検討対象になったのは浅川ダムだけでなく、信濃川水系の清川治水ダム、角間ダム、黒沢ダムなどが挙げられます。そして、浅川ダムを除くすべてが建設中止となりました。
ダムに頼らない浅川の治水対策が検討され、河道内遊水地による検討などが行われたものの、結果的にダム建設を含む治水対策として方向転換の方針が打ち出されます。その後、治水専用ダムと河川改修の組み合わせによる治水計画が採用され、2010年5月、ようやく浅川ダムの着工がはじまります。この際、周辺の地質解析や貯水池の地すべり対策、環境調査、ダム本体の概略・詳細設計、施工計画など幅広い分野を担ったのが建設技術研究所です。
普段はダムに水を貯めないため、土砂の流下や魚の遡上を妨げることがなく、富栄養化による水質悪化もありません。なお、常用洪水吐きと呼ばれる穴には、魚が遡上するための階段状の魚道が設けられています。このことから、浅川ダムのことを「穴あきダム」と呼ぶこともあります。一方、洪水時には貯水をはじめ、下流の被害を防ぎます。こうした特徴から浅川ダムは「環境にやさしいダム」といわれています。