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第4回 地質・地盤分野

地質・地盤の技術者としてインフラ整備を支える

東京本社 上席技師長尾園 修治郎

Profile

入社年:1982(昭和57)年
略歴:学生時代は理学部地質学科に在籍。入社後、1993(平成5)年までは大阪支社地質部所属。1993年から1996(平成8)年まで、海外事業部(当時)に籍を置き、インドネシアに派遣されダム建設の施工管理に携わる。1996年以降、東京本社の地質部門に所属。地圏環境部長を経て、2013(平成25)年から、東京本社上席技師長。
専門:岩盤地質、活断層、地すべり
趣味:セーリング。艇(ふね)といっしょに風と波に遊んでもらっている(弄ばれている?)。

地質・地盤分野での、当社のこれまでの取り組みを教えてください。

当社の地質・地盤分野は、ダムを造るために行う岩盤や地下水の調査と解析からはじまりました。ダムを造る場所の地質調査は非常に精細に行います。日本列島は断層だらけですから、そのような断層のひとつひとつを入念に調べるのですが、日本は湿潤な気候ですので草や木が生い茂っていて、岩盤の様子は直接見えません。地表でさえ見えない岩盤の地下の様子を事細かに調べるわけですので、ボーリングなどの基礎情報を分析する技術が大変重要です。またダムは水を貯める構造物ですので、水が地下をどのように流れているか、水を貯めたらどのように流れるか、水を貯めたことにより斜面が地すべりを起こさないか、などを調べる技術も重要です。
このような技術や経験を活かして、トンネルや橋梁の基礎地盤に関わる調査や解析、地すべりの調査や対策検討、廃棄物最終処分場の調査や解析にも取り組んで来ました。廃棄物の不適正な処理が原因で起こる土壌や地下水の汚染があちこちで深刻な環境問題になっていますが、そのような汚染の拡散ルートの解明や、効果的な対策方法の検討にはダムで培った地下水解析の技術がなくてはならないものになっています。

水理地質構造解析の例

こういった地質構造と地下水の流れを関連づける技術を「水理地質構造解析」と言っていますが、この技術が現在ではわが社の得意とするところになってきました。具体的には、河川改修のための河道掘削やトンネル掘削によって地下水が低下し、井戸や沢水が枯れて生活に支障が出たり、わさびなどの作物に影響が生じたりする影響を、あらかじめ予測して防ぐ方法を考える仕事です。
これらと並行して、軟弱地盤の調査や解析業務も大きな柱のひとつになっていて、地震時の液状化リスクの調査や対策検討の業務も行っています。
さらに、砂防分野の部署と連携して、砂防事業にも取り組んでいます。たとえば、砂防施設の基礎地盤の調査や深層崩壊危険渓流の評価業務なども実施しています。

地質・地盤分野の今後の展開について教えて下さい。

多方面の業務分野で貢献していくことを、今後も推進していきたいですね。
その中でも、防災事業には力を注ぎたいと考えています。たとえば、2014年8月豪雨では広島市をはじめとして各地で甚大な土砂災害が発生しました。このような土砂災害が起こりやすい場所を周知して災害を防止する目的で、土砂災害防止法に基づく警戒区域の設定作業が続けられています。中でも広島県は、全国に先駆けて最も早く警戒区域を指定した県でした。それでも今回のような被害が発生してしまいました。今後このような災害を未然に防ぐためには、いかに効率的に危険な区域を判断し、指定していくかが求められます。地質技術者が地質と地形形成の過程を広く見て、どこから調査を着手すべきかを提案し、調査そのものにも関与できれば有意義になると考えています。
インフラの維持管理でも同じようなことが言えます。点検すべき箇所は膨大ですから、地質技術者が点検調査の対象を絞り込み、そして重要箇所は基礎地盤を含めて丹念に見ることが重要と思います。“言うは易く行うは難し”かもしれませんが、維持管理の分野においてもリスク効率的な調査の提案と信頼性の高い成果を提供していきたいと考えています。

地質・地盤分野のトピックスについて教えてください。

尾園も執筆した専門書の表紙 (出典:地質リスクマネジメント入門、地質リスク学会・(一社)全国地質調査業協会連合会 共著)

「地質リスク」という言葉があります。ジオリスクとか地盤リスクとか言ったりもします。最近、ようやく土木・地質の分野で使われるようになってきた言葉です。最初にお話ししたように、地質・地盤は地面の下にあって容易には見ることができないので、不確実な要素がたくさんあります。設計技術者が設計に使っている地質図面は、あくまで想定なんです。それがために、工事中に想定と違う状況に遭遇して思わぬコストを要することがあります。このコスト変動のことを「地質リスク」と言っています。この「地質リスク」を受容可能な程度にまで減らすためにいわゆる地質調査を行っているわけです。公共事業の事業者(発注者)から見れば調査コストを投じて地質リスクを減らしている訳ですので、「地質リスク」をマネジメントしていることになりますが、実際には受容できないリスクが残っていることがあって、問題になっています。つまり、事業者に地質は不確実だという認識が不足していると、不十分な調査のまま設計・施工のフェーズに進んでしまい、事故などの思わぬ事態が発生するということがあります。逆に、「地質リスク」のマネジメントでは好機となりうるリスクを想定することもできます。例えば、少しの試験を追加することで地盤の強度の不確実性、つまりばらつきを減らして、過大設計を避けることができるというような場合です。
地質技術者は事業者(発注者)の立場にたって、どこに地質の不確実性が潜んでいるのか、あるいはどこで不確実性を減らして工事費用を減らすことができるのか提案する役割があると思っています。つまり、効率的に地質調査コストを投入して「地質リスク」を減らしつつ、経済的に事業を行うこと、すなわち事業者の「地質リスクマネジメント」を支援する役割です。今年度から、「地質リスク調査検討」という業務が国土交通省から試行的に発注されることになりました。こうした業務を通じて地質リスクマネジメントの意義を理解していただき、事業者の支援を通じて地質技術の付加価値を高めて行きたいと考えています。

地質・地盤分野の魅力はなんでしょうか。

現場に行くのは好きですね。特に初めて行く現場は、わくわくします。多くの地質技術者がそうではないでしょうか。
構造物を設計する人は、自ら主体的に、どのような構造物にするかを決めることが重要な仕事となりますが、われわれ地質技術者は、“神が造りたもうた見えないもの”を解明することが仕事です。自分の立てた仮説が現地調査などにより正しいと証明された時には、地質技術者として喜びを感じますね。この醍醐味を味わうには、経験や現地での洞察力が重要になります。現地で見えている現象にどれだけ気が付くことができるか、見てきた手がかりを頭の中で組み立て、どれだけ真値に近い地質・地盤状況を想定することができるかが、技術者の力といえます。
地質・地盤分野の技術者はインフラ整備の主人公ではありません。しかし、地質・地盤の上に造る構造物の安全性を保つための、また、土砂災害の危険から人々の暮らしを守るための、なくてはならない基礎的な仕事です。インフラ整備を支えていく仕事をしっかりこなしていくことで、社会に貢献していきたいと考えています。

深層崩壊の現場の状況

地質・地盤分野の技術者の研修会の様子

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