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第5回 水理模型実験分野

建設コンサルタント最大規模の実験施設を活かす

東京本社 水理センター長最上谷 吉則

Profile

入社年:1980(昭和55)年
略歴:財団法人建設技術研究所に入所してつくばに配属となり、建設省土木研究所(当時)の実験を主に担当した。1989(平成元)年に、模型実験施設が財団法人から株式会社建設技術研究所に移管されると同時に、所属も財団法人から株式会社建設技術研究所に移る。その後も一貫してつくば勤務を継続し、2010(平成22)年から東京本社水理センターのセンター長となり、現在に至る。
専門:河川・海岸の水理模型実験を専門とするが、特に急流河川の水理現象や河川に関する移動床の実験および実験データの分析を得意とする。
趣味:子供に付き合いサッカーのコーチのまねをしていた中で、審判員の資格を取得。現在もシニアのサッカーチームに所属。近年は、奥さんと行く神社仏閣めぐりを楽しむ。

水理模型実験分野でのこれまでの取り組みを教えてください。

研究センターつくば

当社に関わる水理模型実験は、財団法人建設技術研究所(以下、財団法人)が、1958(昭和33)年に行ったフィリピンのマリキナダムの実験が最初でした。それ以来、多くの水理模型実験を財団法人と建設省土木研究所(当時)とが一緒に実施してきました。現在も使われている「水理公式集」(平成11年版)に載せられている数値、例えば、構造物まわりの局所洗掘深の推定式、といった関係式を実験により決めていくような仕事をしていました。
当時の実験場には、全国の名だたる川の模型がありました。この模型を使って、水を流す実験をしながら川の形を決め、治水計画の策定に寄与してきました。実際に現地に出かけなくても実験場内に全国の川がある、というのは勉強する上でもとても恵まれた環境でした。

このような数多くの実験結果が蓄積されるとともに、計算機の能力の飛躍的な向上により、今では治水計画はほとんどがコンピュータによる数値計算をもとにしてできるようになりました。しかし、今でも堰などの構造物のある場所や湾曲部など、複雑な流れができる場所を検討対象とするような場合には、数値計算にも限界がありますので、模型実験をすることで、より正確に実現象を捉えることができます。

水理模型実験分野でのトピックスについてご紹介ください。

近年の集中豪雨への対応に関する業務が今後増えることが予想され、その中でも遊水地や調節池などの模型実験が多くなっています。新しく施設を造る遊水地もありますが、今まで造ってきた遊水地を対象に、雨の量が増えた時にも対応できるような技術の再構築に取り組んでいます。
また、ダム湖の土砂堆積も問題になっていますので、堆積した土砂を排出する方法について実用化を検討しています。ダム湖に土砂を吸引する装置を設置し、バイパス管でダムの下流に排出する、というものです。模型実験と現地で実験して検証しています。
海外でも、当社グループの株式会社建設技研インターナショナルと共同して、かつてJICA(独立行政法人国際協力機構)が造った実験施設を有効活用するために、現地において実験技術を伝承しています。

ダムの排砂システムに関する現地実験の事例

ダムの排砂システムに関する模型

水理模型実験分野の今後の展開について教えて下さい。

マルチコプターで撮影した模型実験施設

画像を駆使した新たな展開を考えています。模型実験では、水位や流速などを測り各種の数値データを取得しますが、数値を並べただけでは、それを見た人に現象を理解してもらうことは難しいのが実情です。そのような時に、写真が1枚あるだけで格段に理解が進みます。この写真(右)は、模型実験施設を「マルチコプター」で撮影したものです。空中で4枚の羽根を使って安定飛行しながら撮影するので、画像が乱れることがありません。実験の前後で撮影した画像を比較するだけで、いろいろな情報が得られます。検討対象河川の現地の状況を撮影して、模型と比較することもできます。撮影方法によっては3次元に加工することもできますので、いろいろな応用ができると思って期待しています。

200年に1度の洪水の模型再現を現地映像に組み込んだところ

また、写真(左)はダムの実験映像を模型縮尺に基づき時間スケールで変換した画像のコピーです。このように模型データを現地に変換する手法を映像についても適用してみました。模型での現象がいかにも実物のように見えると思います。
実験でデータを取得し解析して設計する、という技術は確立しているので、今後は見せ方を工夫しなくてはいけません。

水理模型実験に長年携わってこられていますが、今後に伝えたいことはありますか。

現在の河川模型での実験は、ほとんどが局所的な現象を対象にしています。我々は、この限られた範囲の模型の上流からどのような流れが生じ、下流にどのように伝播していくかは、想像しなければなりません。流れを想像することは、多くの経験がないとできないことなので、この技術をいかに継承していくかが課題です。数多くの経験をしないと理解できないことなので、若い人たちには、できるだけ実験の現場に出て実際に流れに手を入れたりして経験を積んでもらっています。
模型実験は、現場がすべてです。「すべてのネタは現場にある」です。実際の河川の現場も大切ですし、模型実験の現場も大切です。現場に足しげく通って、現象を体で理解する、というのが私の信条です。
また、模型実験技術を継承するためには、もっと多くの人に、この仕事に加わってほしいと思っています。河川・海岸・ダムなど、様々な分野を網羅するオールマイティな水理模型実験技術を持つのが当社の一番の特徴だと思います。このつくばの恵まれた環境の中で、技術を継承していきたいですね。
さらには、模型を使った事業説明や学習の場としても、当施設を有効活用していきたいです。

模型実験による学習会

模型実験を用いた住民説明会

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