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第7回 防災・情報分野(その2・防災)

「正しく恐れる」ための科学技術に取り組む

東京本社 防災室長金子 光夫

Profile

入社年:2006(平成18)年
略歴:2006(平成18)年にキャリア採用で入社。前職では、海岸保全計画や港湾の設計から、プログラム開発、経営企画まで幅広い分野を担当。当社では、情報システム系の強みを活かし、東京本社情報部に配属になる。情報部の中で数多くの防災システム業務を担当し、2011(平成23)年4月から防災室長となり現在に至る。
専門:広域防災計画、防災情報システム。
趣味:ギター。最近はクラシックギターにはまる。難しいところが面白い。

防災分野でのこれまでの取り組みを教えてください。

広域防災ネットワークの概念図

我が国の防災関連の取り組みは、1959(昭和34)年の伊勢湾台風を契機として1961(昭和36)年に制定された「災害対策基本法」が基本となっています。これにより、風水害、地震災害、火山災害、雪害などの自然災害や、火災などの事故災害への対応が定められました。これは、戦後の日本が先進国の仲間入りをするために、それまでの国民が自分で災害に備えるというパラダイムを大きく転換し、政府が責任を持って国民の生命と財産を守るために、治水などのインフラ整備を中心に行うという考え方でした。当社も、防災施設としての治水ダムや河川・海岸堤防、砂防などの整備を担当してきました。
しかし、近年は、気候変動の影響によるハード対策を実施するにあたって定めた計画規模を超える規模の災害が頻発したり、東日本大震災のような想定していない規模の災害、予測の難しい火山災害など、ハード対策だけでは、技術的にも経済的にも対応しきれない課題が山積しています。これが国土強靭化の流れに繋がるのですが、ハードとソフトのベストミックスをどう実現するのかが、今我々が取り組むべき大きな課題となっています。
当社では防災分野において、様々な防災計画の作成を支援しています。これは、内閣府、国土交通省、自治体そして民間など、様々なレベルが対象です。また、常々課題になる情報共有については、指針、マニュアルや情報システムの設計、また広域連携に関しては、拠点整備の計画や広域避難に関する計画業務を担当しています。

防災分野の今後の展開について教えて下さい。

2015(平成27)年3月に「第3回国連防災世界会議」が東北の仙台市で開催されますが、これは一つの節目になると考えています。発生から4年になる東日本大震災を振り返り、今後の防災のあり方についての世界的な議論が繰り広げられると思います。特に、日本は防災先進国として捉えられていますし、防災パッケージとして海外に展開していくためにも世界防災会議は重要だと考えています。
また、国内に目を向けると、東日本大震災からの復興については、まだまだ時間が必要だと思いますが、全国的には、今後の防災のあり方、一言で言うと「国土強靭化」を支えていくために注目されるものとして、4つのことが挙げられると思っています。
まず1つ目は「情報」です。大規模災害時には、早期に全体像をつかみ対策のグランドデザインを示すことが求められますが、これが大変難しい課題となっています。災害関連の情報を集約する技術、センサー技術、それを結ぶ多様な情報インフラなど、情報を集めるというのは大変な総合力です。また集めた情報の分析、予測、そして、人を動かす時の「わかりやすく伝える」という情報伝達の仕組みを整える必要があります。
2つ目として「防災教育」があげられます。東日本大震災以降、津波避難をはじめとして教育の効果が注目されています。当社でも、自治体職員が実施する防災出前講座のテキストの作成などを行っています。
東日本大震災以前は、住民向けの情報はシンプルだったのですが、最近では、例えば「必ずしも避難しないで2階に退避した方が安全な場合があります。」とか、住民側の防災リテラシーとでもいいましょうか、地域の危険を読み解く能力を求めていく方向に変化しつつあります。最終的には住民が理解できなければ情報の有効活用になり得ないので、座学であったり、訓練であったり防災教育の需要は増加すると考えています。
3つ目として「事業継続計画(BCP)」があります。大規模災害が起こっても行政が継続して機能することが重要です。当社は、国や自治体などの行政機関だけでなく、港の埠頭公社などの公的な機関のBCPも検討しています。
そして最後に、これらのソフト施策を尽くしても、どうしても防ぎきれない地域や重要な施設への「ハード的な取り組み」があります。こうしたソフトとハードの懸け橋をつくることも防災技術者の重要な役割だと考えています。

防災分野でのトピックスについてご紹介ください。

「災害時活動困難度を考慮した総合危険度」マップ(東京都)

最近のトピックスとして、災害に強いまちをつくるために、東京都を支援した取り組みを紹介します。東京都が実施した「第7回地震に関する地域危険度測定調査」を結果に示したのが右の図です。地震による建物の倒壊や火災延焼による危険度に、消火・救助活動の困難度を加えて、総合危険度として表しています。2つの情報を重ね合わせることで、より現実に近い危険度を表現できました。
最近では、google防災マップ(http://www.google.org/crisisresponse/japan/bosai?hl=ja)でも、この調査結果を確認し、自分たちが生活している地域の危険度を知ることができます。
また、これからの取り組みとして注目されるものとして、京都にあるお寺から地区防災計画の業務が発注された件があげられます。火災によって重要文化財が焼失することを防ぐために、地域ぐるみで防災計画を立案するのですが、これをお寺が中心になって取り組むという事例は、自助・共助の取り組みとして注目されます。今後も、行政単位だけではなく、自治会など小さな単位でのきめ細かい防災計画が作られていくようになると思いますので、それらを積極的に支援できればと考えています。

防災分野に携わる専門家として心にとめていることは何ですか。

「正しく恐れる」という言葉を大正から昭和初期の物理学者である寺田寅彦が残しています。むやみに恐れることをせず、また、逆に全く恐れないということでもなく、正しい知識を持ったうえで、自然の脅威に畏怖の念を抱く、という意味だと理解しています。東日本大震災直後の防災に対する議論が揺れ動いていた時に、この言葉がとても大切だと思いました。この「正しく」の一つの答えは科学技術の中にあると思います。我々防災の技術者の使命は、科学技術に基づいた「正しく恐れる」ための正確な情報提供や迅速な情報伝達、備えとしての防災インフラの構築を支援していくことにあると考えています。

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