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第11回 ダム分野

ダムを1000年使い続けるために

東京本社 ダム部長石田 裕哉

Profile

入社年:1986(昭和61)年入社
略歴:学生時代はコンクリート工学を専攻。全国をまたにかけて仕事がしたいと考え、総合建設コンサルタントである当社に入社。採用試験時に勤務地はどこでもよいが、大学で学んだことが活かせる部署を希望。結果的に大阪支社(現在の大阪本社)のダム部門に配属となる。1999(平成11)年に東京本社ダム部に異動になり、2013(平成25)年から現職。
専門:ダムの計画・設計
趣味:平日録り貯めたドラマを休日に見ること。毎週5~6本は見る。

ダム分野における当社の取り組みを教えてください。

 株式会社建設技術研究所は、1963年に財団法人から分離独立する形で設立されています。財団法人創設当初の1947年に日本軽金属株式会社から佐野川柿本ダムの調査・設計を受託するなど、建設コンサルタントのダム分野ではパイオニア的存在であり、全国にある数多くのダムの計画・設計に携わってきています。
 私が入社した当時の大阪支社では、自治体が管理するダムの利水・治水計画をダム分野の部署で検討していました。このため、特に利水計画の検討では、雪の中の現地調査によって農業用水の取水口置の確認を行い、取水状況を把握した上で利水モデルを構築するなど、大変貴重な経験ができました。こうした経験によって、計画から設計までの幅広い技術が獲得できたと考えています。それ以外では、大阪支社時代に狭山池ダムの改修に、東京本社時代に天竜川ダム再編事業などに携わりましたので、そのことについて紹介します。
 狭山池は7世紀に建造されたことが日本書紀にも記されている貯水池で、1400年の長きにわたり河内平野をうるおし続けています。この由緒ある貯水池を、利水機能だけではなく治水機能をあわせもつ多目的ダムとして改修する平成の大改修が行われ、その設計と建設時の技術対応に携わりました。建設の段階で、古代に大陸から伝わったといわれる「敷葉工法(葉のついた木の枝を敷きつめ堤防の基礎にする工法)」を用いて土が盛られていることが明らかになるなど、古代の人の技術力に驚かされました。その経験から、1000年後の人を驚かせることができるよう、自分の技術力を高めていかなければならないとの思いを強く持ちました。
 東京本社に転勤になってからは、天竜川ダム再編事業に携わりました。これは、1956年に建設された水力発電を目的とした佐久間ダムの容量の一部を洪水調節用の容量に振替えることで新たな容量を確保し、天竜川中下流部の洪水被害を軽減させる事業です。事業を進めていくには、数多くの課題がありますが、特に問題となったことが、確保した洪水調節容量内に土砂が堆積し、容量が減少してしまうことです。このため、ダムに流入する土砂を極力下流に流す、または除去することで長期的な洪水調節容量の確保と下流への正常な土砂供給を図る検討も併せて実施しています。
 新規ダムの計画や設計に関する仕事も数多くありますが、最近では、紹介したようなダムの改造事業や、ダム再編事業などが増えています。また、限られた容量で最大限の洪水調節効果が期待できるダム操作やダムのメンテナンスなど、今後は建設されたダムが半永久的に使い続けられるような検討が重要になってくると思われます。

天竜川ダム再編事業(出典:国土交通省浜松河川国道事務所ホームページ)

ダム分野でのトピックスについてご紹介ください。

吸引工法のしくみ

 ダムを長期にわたって利用するためには、時代のニーズにあわせてダムの使用方法を見直していく必要があります。最近では、土砂管理やダムの点検など維持管理に関する業務が増加してきています。
 土砂管理の方法としては、排砂バイパス、フラッシング排砂、吸引工法などがあり、それぞれのダムに適合した工法を選定する必要があります。特に、吸引工法は、新たな対策方法であり、水理模型実験や現地での実証実験などにより技術を開発中です。

水中ロボット

 また、ダム提体の点検方法も見直しが進みつつあります。ダム提体の上流面は水の中にあり、点検は人が潜って実施していますが、安全性などに課題があります。このため、当社では、ダムの提体やゲートを水中から調査するロボットを東京工業大学、株式会社ハイボットと共同で開発しています。このロボットが開発できれば、濁水の中でも潜水士に頼らず水深100m程度までの点検が効率的でかつ安全に実施できるようになります。
 さらに、大規模地震に対するダムの耐震性能照査に関しても、当社は豊富な実績を持っています。特に、アーチ式コンクリートダムは三次元の解析モデルを使うので、高度な技術が必要になり、当社が得意とするところです。

ダム分野の今後の展開について教えて下さい。

 国土交通省や都道府県が管理するダム数は、全国で400基以上に上りますが、それでも川の氾濫や流域内の渇水被害が生じているため、今後もダムの整備は必要であると考えています。ただ、現在の社会情勢を考えると、新規ダムの計画・設計に関する業務は少なくなり、今あるダムを有効活用する方向にシフトしていくと思っています。これは、ダムを再開発するということですが、再開発の方法としては、ダムを嵩上げせず今ある容量の配分を見直して効率よく活用する方法と、ダムを嵩上げして容量を増加させる方法の二種類があります。このうち、ダムを嵩上げする場合は、今あるダムを使いながら作業する必要があり、新規ダム建設に匹敵する高度な技術が求められます。これからのダム技術者は新規のダムをつくる技術を獲得した上で、再開発に関する技術を身につける必要があります。当社でダム分野を担うのは東京本社、大阪本社、九州支社の三部署ですので、各エリアにおけるダム事業の進捗状況を踏まえて、幅広いダム技術が身につくように、人事交流を行っていきたいと考えています。
 また、既設ダムを使い続ける視点も重要ですので、ダムの点検・維持管理や堆砂対策などの技術も磨いていく必要があります。先述のとおり、ダムは適切に管理すれば半永久的に利用できる土木構造物ですので、ずっと使い続ける技術を、今後も開発していきます。

ダム分野に携わる専門家として心にとめていることは何ですか。

 ダムは、洪水が起きれば河川が氾濫しないように水をため込み、渇水になればため込んだ水を放流するなど、国民の生命、財産、生活環境などを守るために活躍していますが、その効果がはっきりとは目に見えないためか、正当に評価されているとは言い難い状況です。一般社団法人 ダム工学会では、市民・ダムファン、技術者・研究者の交流の場とすることを目的に毎年with Dam Nightを主催し、我々はそれをバックアップしていますが、まだまだアピール不足の面も否定できません。このため、このような協会活動を通じて情報を積極的に発信していきたいと思っています。また、狭山池ダムは、1400年を経た今でも多目的ダムとして活躍しています。現在我々が対応しているダムが1000年後においても活躍できるよう技術力を高めていく必要があることから、新たな技術開発にチャレンジし、今日よりも明日、明日よりも明後日と、少しずつでも確実に技術力を高めていきたいと思っています。

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