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第15回 橋梁設計分野

「世界に一つだけの橋」をデザインする

東京本社 構造部長松浦 城太郎

Profile

入社年:2006(平成18)年8月キャリア入社
略歴:大学では構造力学を専攻。橋梁専門の建設コンサルタントに入社し、国内外の道路や鉄道の大規模橋梁設計に携わる。阪神・淡路大震災後は、耐震補強設計を数多く手がける。当社入社後、東京本社構造部に配属され、多くの橋梁設計、耐震補強設計に携わった。複合ラーメン橋などの特殊橋梁の設計や高強度RC橋脚の基準化に係る実験研究、東日本大震災後には津波で被災した橋梁の被害分析なども担当した。
専門:橋梁計画、コンクリート構造物、基礎構造物、耐震設計、補強設計。新潟県中越地震の際には被災した高速道路橋梁8橋の補修・補強設計を社会要請に応えるべく1カ月で実施した。急ピッチ、不眠・不休で苦労したが思い入れの強い仕事である。
武道歴22年。柔道参段、極真空手1級。現在は週に一度、スポーツクラブで汗を流す。

橋梁設計分野における当社のこれまでの取り組みを教えてください。

不動大橋 平成22年度土木学会田中賞受賞

 様々な形式の長大橋梁を手掛けてきました。不動大橋(世界初となるPC複合トラスエクストラドーズド橋)、新猪名川大橋(PC斜張橋)、センチュリー大橋(多段式ケーブル吊橋)、ワルミ大橋(上路式RC固定アーチ橋)等、多くの作品が土木学会田中賞や各種学協会賞を受賞しています。銚子大橋(鋼複合斜張橋)、かりこぼうず大橋(キングポストトラス構造による木造車道橋)、矢島跨道橋(鋼複合ポータルラーメン橋)等、特殊橋梁も数多く設計しています。

ワルミ大橋 平成23年日本コンクリート工学会作品賞受賞

 また、高度な解析を要する橋梁の補強設計も得意としています。港大橋(ゲルバートラス橋)の耐震補強設計では、近傍断層から伝搬する地震動を考慮した損傷制御設計を導入してコスト縮減を達成し、土木学会田中賞を受賞しています。いくつかの橋梁では、有効応力法による地盤の液状化解析と構造物の非線形挙動を連動させた動的解析により、合理的な耐震設計を実施することも行っています。
 東日本大震災の際には、岩手、宮城、福島県の津波浸水エリアに位置する橋梁200橋の被害分析を行いました。津波の影響(波高や流速)と橋の抵抗の相関を分析し、津波作用と橋の流失の有無の因果関係を把握しました。

橋梁設計分野の今後の展開について教えてください。

 国内に目を向けると、新規道路事業の減少に伴い新規路線の橋梁設計は少なくなっています。渋滞解消のための拡幅設計、高速道路の大規模更新、老朽化や河川改修に伴う橋梁の架替え等がターゲットになります。
 渋滞対策として2車線道路を3車線に変更するなど、橋梁拡幅のニーズが増加しています。拡幅橋は、既設橋の脇に新たな桁を架設して既設部と新設部を一体化する設計を実施します。施工ステップを考慮した設計を行うとともに、供用中の道路脇での施工計画を立案するなど配慮が必要です。
 大規模更新は、老朽化が進んでいる高速道路の橋梁の床版を順次取換えていくもので、東・中・西日本高速道路株式会社は1.6兆円の予算をかけて延長224kmを対象に実施していきます。当社は、床版取替えに伴う設計照査、施工計画等を担います。
既設橋の架替え設計は、橋の老朽化だけでなく、河道計画において河積阻害の要因となっている既設橋などを対象に増えています。
 一方、海外業務においては、今後もビックプロジェクトが期待されます。私が新人の頃は、国内の長大橋を設計することができましたが、今の若手技術者は大規模橋梁を担う機会が少なくなってしまいました。海外プロジェクトに積極的に参加し、「あの橋は俺がやった」と自慢できる自分の代表橋梁を作ってもらいたいと思っています。

本線拡幅鋼桁架設イメージ図

橋梁設計分野のトピックスについて教えてください。

3Dプリンターによるジャンクション模型

 津波の話題に戻ると、当社では、「津波に耐える」のではなく「津波をいなす」橋の設計を指向し、橋の上部工と下部工をつなぐ部材である「支承」をヒューズとする方法について研究しています。今後、「津波に耐える」橋が要求されると、橋は今よりも相当なビルドアップが必要になります。一定の外力以上の津波が作用すると支承が壊れ、上部工は流失するものの、同じ桁を架ければ比較的容易に復旧ができる、このようなヒューズとなる支承構造について考案中です。
 CIM(Construction Information Modeling)にも積極的に取り組んでいます。当社で最初のCIM試行業務となった九州地方整備局発注の春吉橋詳細設計修正外業務では、3Dレーザースキャナーにより現地の点群データを取得し、これに橋の3次元データを重ねて60ステップの橋梁架替え施工図を作成しました。CIMの活用により、顧客や関係者と円滑に協議ができるだけでなく、施工計画において見落としがちな障害物との取り合いや、近隣への影響などに気づくことができます。
 また、3Dプリンターを使った、構造物の模型も作製しています。高速道路のジャンクションの複雑な線形、構造物の取り合いを模型化しました。このおかげで、今まで手作業だった橋の模型作製を効率化できる目途がたちました。
 熊本地震で被災した道路の復旧支援にも積極的に対応しています。県道28号熊本高森線では多くの橋梁が被災しました。被災橋梁の復旧に向けた設計・施工に係るCM業務を受託し、現地に橋梁技術者を派遣して事業を推進しています。

橋梁設計分野に携わる専門家として、仕事に対する信条などがありましたら教えてください。

 世の中には、どこを切っても同じ金太郎飴のような橋が沢山あります。横並び主義、前例主義の弊害です。本来、橋は単品生産で、線形も制約条件も違えば、架橋位置の地盤も千差万別です。頭を柔らかくし、創意工夫を駆使して、最適な橋をデザインしていきたいと考えています。実務では、前例のない提案はなかなか理解されない場面もありますが、高いプライドを持って、「世界に一つだけの橋」を手掛けていきたいと思います。
 かつて、尊敬する師匠から、「世界に一つだけの最高の橋をデザインすることは、オリンピックで金メダルを獲ることと同じくらい価値がある」と教わりました。今後も、金メダルを獲るつもりで仕事に取り組んで行きたいと思います。

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