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第17回 河川・海岸分野(その3・海岸保全計画)

地域再生のために海岸技術を活かす

東京本社 河川部 海岸海洋室長原 文宏

Profile

入社年:1983(昭和58)年4月入社
略歴:学生時代は、新潟県の親不知海岸に建設中であった北陸自動車道を対象に、橋脚周辺で発生する局所洗掘に関する2次元水理実験など、漂砂について研究。入社目前に新設されたばかりの海岸室に配属される。1993(平成5)年10月から1994(平成6)年9月まで、建設省土木研究所(現国土交通省国土技術政策総合研究所)海岸研究室の部外研究員として出向し、高潮等を研究。そのなかで、海岸工学分野における人脈を広げる。2003(平成15)年4月より東京本社海岸海洋室長に就任し現在に至る。
専門:高潮対策、海岸侵食対策、総合土砂管理など。
趣味:旅行や野外活動。ボーイスカウトのリーダーとして20年以上のキャリアを持つ。

海岸分野における、当社のこれまでの取り組みについて

鳥取県総合土砂管理ガイドラインのパンフレット

 当社における海岸部門の組織としては、1982(昭和57)年に東京支社技術第3部(当時)の部内室として新設された海岸室が起源であり、すでに30年を超える歴史を刻んでいます。
 海岸室の設立当初は、海岸の仕事が少なく、ダムの流量検討業務、レーダー雨量計に関する業務、地下水管理・地盤沈下対策に関する業務など、いろいろな業務に対応していました。その後、都道府県を中心に海岸の仕事が増えていきました。地域的には青森県、福島県などの東北地方が多く、海岸保全の全体計画、海岸事業の事業評価関係の業務などを受注しました。また、九州では有明海沿岸や八代海の高潮予測の業務も受注していました。
 その後、2003(平成15)~2004(平成16)年にかけて、鳥取沿岸の総合的な土砂管理ガイドライン策定業務を鳥取県より公募型プロポーザルで受注しました。この業務で、全国で初めての県下全域を対象とする総合的な土砂管理ガイドラインを作成しました。この実績があって国土交通省が工事を実施する直轄海岸の侵食対策業務に本格的に参入できるようになりました。
 2008(平成20)年度には、寄り回り波によって甚大な被害が発生した富山県の下新川海岸が、全国で初めて水防警報指定海岸に指定され、水防警報発令基準の検討などを行いました。
 東日本大震災関連では、2012(平成24)年、仙台湾南部海岸の環境保全対策業務があります。津波で甚大な被害が発生した仙台湾南部海岸において、海岸域の植物や動物の変化を把握したうえで、海岸保全施設を設計しました。施設整備後の効果を持続させるために必要な砂浜を含む海岸の維持管理計画を検討しました。この業務では環境部、水工部と連携して課題解決を図っています。

 

海岸分野の今後の展開について

 一つには、沿岸域管理の重要性が大きくなってきています。これまでの高潮対策や海岸侵食対策などのように、海岸を線的に捉えるのではなく、海岸と背後のまちづくりとをトータルに考える必要があります。少子高齢化の進行によって、住む人のいない海岸背後のまちも発生しそうです。また、漁業に携わる人がほとんどいなくなった漁港にどう対応するのかなど、地域再生と沿岸域管理とをトータルで考えることが建設コンサルタントに求められると考えています。
 二つ目に考えなければならないのが、海岸保全施設の維持管理や長寿命化です。多くの海岸堤防が1960~70年代に整備されましたので、およそ50年が経過し劣化も進行しつつあります。当社でも、UAVを使った施設のモニタリングなどを実施していますが、砂浜の保全も含めた維持管理の業務は今後ますます増えることになると思います。
 三つ目の視点として、新工法が挙げられます。一例としてサンドパック工法があります。この工法は現場の海浜材料又は養浜材料となる砂を土木用の繊維でできた大型の布袋に入れて大型の土嚢とし、汀線付近に設置するものです。当社では石川県の千里浜海岸における効果の検証を担当しています。その他、静岡県の福田(ふくで)漁港で実施しているサンドバイパスでは、サンドポンプを用いています。漁港の航路に堆積した砂を侵食の進む海岸へポンプを使って管路で圧送するものです。浚渫船やダンプトラックを使った運搬に比べて、費用の低減が期待できます。平成26年度に実施したサンドポンプの効果のモニタリング業務が、平成28年11月に静岡県交通基盤部優良業務委託として表彰されました。
 また、海外にも積極的に展開することを考えています。これまで、国際部とともに中国や台湾の海岸の現状を視察したり、ミャンマーの港湾整備の現状を視察しています。これからの海外展開をめざし、中堅室員にフィリピン国内の業務を経験してもらったりしています。
 今はグーグルマップでおおよその地形変化を把握することができますので、海外の現地に行くときや国内の業務を受注した時には、事前に見て現地の状況をイメージしておきます。基本的に波の発達や変形、漂砂に関わる現象は国内も海外も同じです。このため国内で培った海岸保全に関する技術は、世界で十分通用しますので、今後の展開に期待しています。

海岸分野のトピックスについて

緑の防潮堤

 最近のトピックスを三つほど紹介します。一つ目は、宮城県の名取川河口に位置する井土浦(いどうら)に施工されている粘り強い海岸堤防です。粘り強い海岸堤防には、CSG工法と呼ばれるダムに適用される技術が使われています。海岸堤防を津波が乗り越えても、堤防の破壊や倒壊までの時間を少しでも長くできるように、構造上の工夫がなされています。井土浦には、当社の部門研修で多くの技術者が現場見学に行ったりもしています。
 二つ目は緑の防潮堤です。これは東日本大震災における教訓により考案されたもので、樹木で波の力を弱め、津波が堤防を乗り越えても本堤が流れにくいようにして被害を軽減しようとするものです。当社では、岩手県の海岸堤防を対象に、緑の防潮堤の断面を決め、その効果を示す業務を担当しました。
 

井土浦において建設工事中のCSG堤防の視察

 三つ目は高潮による浸水想定区域図の作成です。東日本大震災を経験し、津波の浸水想定区域図を作成する動きが活発化しましたが、それも概ね終了しつつあります。今は高潮浸水想定区域図の作成に注目が集まっています。想定される最大の台風が来襲した場合に発生する高潮を対象に、その氾濫による浸水範囲を想定して、減災対策の基礎資料とするものです。以前は、伊勢湾台風(1959年)が最も危険なコースを進むことを想定してシミュレーションを行っていましたが、今は、より気圧低下の大きかった室戸台風(1934年)をモデル台風として使うようになっています。2015年に、「高潮浸水想定区域図作成の手引き」を作成する業務が国土交通省から発注され、当社がその業務を担当しました。
 現在は、このマニュアルに基づき、全国各地で高潮の浸水想定区域図が作成されつつあります。

※CSG工法:ダム技術センターが中心となって開発した技術で、建設現場周辺で入手可能な材料を用いてダムの堤体等を築造することによって、環境負荷低減とコスト低減が図れる工法。

海岸分野に携わる専門家として、仕事に対する信条などありましたら教えてください。

 海岸は、時々刻々と変化する波や流れの作用によって地形が変化するので、とにかく現場を見ることが大切です。パソコンでシミュレーションを行う必要もありますが、やはりそれだけでは不十分で、リアルな現象を見なければなりません。最近は、グーグルアースで過去10~20年間の海岸の状態を見ることもできるので、対象の海岸の変遷も俯瞰することができます。この変遷を見つつ、現地に行って海岸で起きていることを肌で感じることが大事だと思いますし、日ごろからそのように努めています。
 また、何事にも好奇心を持つことが重要です。私は飛行機に乗るときには必ず窓側の席を確保し、各地の海岸線を見るよう心掛けています。担当している業務とは関係のない海岸でも、ここはどうしてこうなっているのだろうかと、好奇心を持ち、考えながら見ることが大事だと思います。
 海岸の技術を保有する建設コンサルタントは多くありませんが、当社においても海岸の部署を全国に置いているわけではありません。このため、自然と出張する範囲が広くなります。私自身、仕事で訪れたことのない都道府県は数えるほどになりました。旅行が好きで、元気があって何事にも好奇心が持てる学生の方には、ぜひ、海岸の世界に飛び込んで来て欲しいと思います。

世界遺産富士山と三保の松原

新潟県親不知海岸

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