研究開発RESEARCH AND DEVELOPMENT

下水道雨天時浸入水検知システムの開発

費用も時間も大幅削減〜特許:下水道雨天時浸入水検知システムの開発

大雨などが降ると下水道管路施設から水が溢れ出すことがあります。原因はさまざまですが、たとえば下水管の老朽化によってヒビやすき間ができていたり、マンホール蓋に破損があったりする場合、そこに雨天時浸入水(※)が流れ込む事態が引き起こされ、前述の現象が起こるのです。
※雨天時浸入水とは、分流式下水道の汚水管に雨天時に浸入する水や、地下水位以下に埋設された汚水管に浸入する水などのこと

雨天時浸入水の放置は多くのデメリットを生み出します。たとえば計画量以上の水が流れ込んでしまうと、浸水被害やポンプ場に大きな負荷がかかります。さらに、土砂堆積などが雨天時浸入水と一緒に引き込まれると、浚渫費等の管路施設維持管理の増大にもつながるでしょう。そのほか、市町村で増大した雨天侵入水によって流域負担金の増加も考えられます。
雨天時浸入水によって下水道処理場への流入量が増えると、それを処理するための費用も大きくなり、結果下水道経営の圧迫にもつながります。しかし、従来の流量計や水位計を用いた下水道の雨天時浸入水検知には高額の調査・分析費がかかるため、調査範囲を限定するしかありませんでした。こうした背景を踏まえ、当社は雨天時浸入水を安価で迅速に検知することを目的に技術開発をスタートさせました。

音響データによる機械学習モデルで雨天時浸入水を予測・検知

雨天時浸入水の検知を行うために、当社は音声データに着目しました。具体的には、流水音を含む音響データの音響特徴量パターンや、無降雨時の流水音を含む音響データと、無降雨時とは異なる条件下での流水音の音響データ、その一方もしくは両方から抽出された音響特徴量パターンなどを、機械学習を使いモデル化。観測データと照合させ、雨天時浸入水の有無をAIなどを使い予測・検知します。
導入後、調査及び分析費用が従来比50%程度削減できたうえに、AIを用いることで分析時間も大幅に短縮されました。この下水道雨天時浸入水検知システム研究の成果は、国土交通省の実証事業で評価を受け、特許査定を得ることもできました。

特許番号 特願2018-207773
発明名称 不明水検出装置、不明水検出方法、プログラム及び不明水検出システム
※国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同特許

第5回インフラメンテナンス大賞「特別賞」(国土交通省)受賞
電波タイムズ紙(2022年3月11日 金曜日 朝刊)で紹介されました(PDF)

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