project story02

先進のIT、AI技術の導入により
インフラ維持管理の業界は激変しつつある。
CTIは、先頭ランナーとして走り続ける。

東京本社 インフラマネジメントセンター 立山 晃

東京本社 インフラ
マネジメントセンター

立山 晃

1999年入社

以前はゼネコンで土木構造物の設計・施工管理をしていたという立山。しかし「その構造物をどういう形にするか」という、より上流の計画段階から携わりたいと思い、この分野で実績が豊富なCTIへの転職を決意した。今日ではインフラマネジメントセンターに所属し、橋梁維持管理の専門家として、点検・診断、補修・補強設計、長寿命化計画策定などを行いながら、先端技術の導入による効率化・高度化に取り組んでいる。最近、一般の人々にインフラ維持管理の重要性に関する理解が上がってきたことがうれしいと語る。

日本の高度成長期とは、わが国が経済的に急激な発展を遂げると同時に、道路や鉄道網、ダムなどが大量につくられた時代である。しかし、これらの社会インフラは建設から半世紀を過ぎ、一斉に老朽化し始めている。いわば日本のもう一つの高齢化問題である。今日、日本に存在する橋梁は73万橋といわれる。その数の多さもさることながら、他の構造物と比べて構造が複雑であり、万が一通行不能になった場合の影響もきわめて大きい。CTIではこの問題にいち早く注目し、2004年に業界に先駆けて「アセットマネジメント室」を設立。橋梁の点検や補修設計、長寿命化計画の策定などを行ってきた。

しかし問題は橋梁に限ったことではない。同室は日本のさまざまな社会インフラの維持管理に対応すべく、2013年に「インフラマネジメントセンター(以下・IMC)」に改組。総合建設コンサルタントとして河川やダム、砂防、下水道、港湾、廃棄物処理、公園などの維持管理に取り組む多くの部室と連携して、維持管理技術の集約と高度化に取り組んでいる。そして今日、この事業にとって最も重要なキーワードが「ITなどの先進技術との融合」である。

開発中の橋梁懸架型点検ロボット

SEQUENCE.01

現実をモデル化するための技術

IMCの業務は大きく3種類に分かれます。1つ目が、主に橋梁など、道路のインフラ施設の点検・調査、診断、そして点検結果に基づく劣化予測やライフサイクルコストの算出、中・長期を見越した長寿命化計画の作成など。いわば、これから先、橋梁の維持管理をどうするかという「PDCAサイクル」の策定です。近々、自治体の橋梁点検が全国的に一巡してくるため、前回の長寿命化計画で顕在化した課題をふまえた計画の見直しやシステム構築も行うようになってきました。

2つ目が、ITを活用した新しい点検・診断方法の開発。当社では大学やベンチャー企業と共同でより効率的でより安全・正確な橋梁点検ロボットの開発に取り組んでいます。現在開発に取り組んでいるのは、ドローンのように空中を自由に飛行して搭載カメラで点検部を撮影する「飛行型」と、橋梁の上からワイヤーやアームを吊り下げ、その先につけたカメラやセンサで橋梁の裏側を点検する「懸架型」の2タイプ。

そしてIMCの主業務の3番目が、上記をふまえた橋梁の補修・補強設計。ここで最も問題になるのが、高度成長期当時の図面が残っていないケースが多いこと。また元の図面が残っていたとしても、長い年月を経て図面と現況が様変わりしているケースも珍しくありません。そこで、「3Dスキャナ」などの最新機器を駆使して、今現在の構造物の形状を正確にモデル化し、業務の効率化を進めています。

SEQUENCE.02

私たちは、土木業界の「医師」である

この業界では、既存構造物の補修・補強設計の技術は「医師」と似ているといわれます。理由は、きわめて広範な知識が必要だということ。たとえばコンクリートにひび割れが見つかったからといって、すべて同じ対策を取れば良いわけではありません。ひび割れの種類や発生原因、劣化の特性は個々の現場ごとにまったく異なります。また損傷が構造物に与える力学特性、補修する材料特性などの知識も必要です。さらに構造物はその誕生から今日まで、どのような環境条件、利用条件を経てきたのか。施工時にどんな材料が用いられたのか。設計基準は今と同じか否か。こういった条件を理解した上で診断をしないと、一つのひび割れに対してどのような「オペ」を選択するかがまったく変わります。

もう一つ、私たちの仕事が医師と似ているのは、見えない場所を可視化するために、さまざまな先進技術を活用するということ。たとえばコンクリート内部の鉄筋の位置を確かめるには、「RCレーダ」という装置が用いられます。また鉄板の表面のサビが内部にどの程度入り込んでいるかを探るために「超音波板厚計」があります。他にも手が届かない高所撮影用カメラや、内視鏡のようなファイバースコープも検査の現場で大活躍しています。

こういった先進の計測機器は、ここ数年で一気に業界で一般的に用いられるようになってきました。しかし当社では、業界に先駆けてこれらの先進機器を導入。より正確で安全な検査の実現に取り組んできました。今日でも、より効率化・高度化に繋がる機器の導入や開発を進めています。

そしてこの先もずっと、世の中の人々が社会インフラを当たり前のように利用できるようにすること。それが私たちの使命です。

地上から3Dスキャナ計測した橋の鳥瞰図

SEQUENCE.03

先進機器が現場作業も変えていく

仕事の苦労は……すべてです。たとえば橋梁の点検をする時、現場でいきなり検査が始められるわけではありません。万一の事故に備えて交通を規制します。そのためには警察署や地元自治体に対して事前に詳細な計画を提出するなど、綿密な準備が欠かせません。また実際の補修・補強工事の段階になってから、設計図面と現場が大きく異なっているため、「設計図の通りに施工ができない」と連絡が入ることもあります。たとえば既設構造物の寸法が図面と違ったり、アンカー用の孔を削ったらコンクリート中の鉄筋に当たったり、図面に記載されていない附属物が取り付けられていたり……。こうした連絡があると、ほとんどが設計変更になります。しかも現場を止めるわけにはいかないため、待ったなしの対応が求められます。

そのために、前述したような3Dスキャナ、RCレーダ、超音波板厚計などの維持管理機器はさらに出番が増えてくるものと思います。また今後はAI技術との融合により、点検や診断のやり方そのものも大きく変わっていくものと思います。そしてこれらの機器を誰もが使えるように、当社では座学による計測理論の学習に加え、実機を用いた使い方の研修会なども開催しています。

SEQUENCE.04

全国の社会インフラの維持管理をサポート

先日、構造物の維持管理に関して当社が開発してきた技術を社外へ情報発信するために、ビッグサイトで開催された「インフラ検査・維持管理展(メンテナンス・レジリエンスTOKYO2017)」に出展。多数の業界関係者の方々にご訪問をいただき、維持管理に対する世の中の強い関心が伺えました。私たちが今後進むべき方向性を探る上でも大きな刺激になっています。

また、インフラ施設の維持管理は、住民の方々がその施設を利用し続ける限り、今後も継続して行わなければなりません。しかし市町村などの自治体の場合、人材や技術、そして資金不足により、継続的な維持管理が難しい状況にあります。私たちは、これまで培った維持管理技術をさらに高度化させると同時に、財政不足を補う長寿命化計画、さらに包括的民間委託などのさまざまな形で社会インフラの維持管理に取り組んでいきます。