2024.02.28
技術・研究
当社とアジア航測株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:畠山仁、以下「アジア航測」)は、流域データ管理、流域治水施策の効果表示を一体に実施することができる「流域治水DXシステム」を共同で開発しました。このシステムは、大規模出水時の被害を少なくするためのさまざまな流域治水施策の効果を容易に定量的に評価・表示することができ、関係者間での合意形成構築に寄与します。
1.背景
令和2年度末に「流域治水プロジェクト」が全国109の一級水系、12の二級水系(令和5年3月末時点500水系)で公表されたのを受け、水系内で設置された流域治水協議会では目標の共有、実施する施策の議論が進められています。しかし、流域治水施策は流域内の多種多様な機関等に係るため、関係者間での合意形成が必要な事項が多く、具体的な議論に時間を要しているのが現状です。流域治水を進めるためには、流域治水施策の効果を定量的に評価し、その施策の必要性を明らかにすることが必要となっています。
2.開発した技術の概要と特徴
「流域治水DXシステム」は、流域治水の施策立案、効果検証、施策の進捗管理を共有することを目的に開発したシステムです(図1)。なお開発したシステムは荒川水系支川鳩川流域を対象に試行しました。
このシステムは、「データ系」、「解析系」、「表示系」の3種類のシステムで構成されており、それぞれ以下の特徴を有しています。
①データ系
データ系システムは、降雨データ、3次元管内図で対象としている流域・河道データ、河川構造物データなどを蓄積したシステムであり、新たなデータが得られた場合も容易に更新することができます。
②解析系
解析系システムでは、データ系システムに蓄積されたデータを用いて、多様な降雨条件による流域からの流出量、河道水位、氾濫現象を解析し、流域治水施策の効果を算定できます。対象とする解析と流域施策は以下のとおりです。
【解析】流域流出計算、河道水位計算、氾濫解析
【施策】(流域での対策)田んぼダム、雨水貯留浸透施設、貯留保全区域の指定 など
(河道での対策)遊水地整備、堤防整備、排水施設整備 など
③表示系
表示系システムでは、データ系システムに蓄積された3次元管内図等のデータを用いた編集・集計、解析系システムの解析結果を用いた結果の表示が可能です。解析結果の表示では、水位・流量ハイドログラフや水位縦断図などだけでなく、浸水エリアの3次元表示、アニメーションなども可能です(図2~図4)。
図1 システム構成
図2 施策検討画面イメージ(貯留施設検討の例)
図3 流出解析画面の表示イメージ
図4 河道氾濫解析画面の表示イメージ
3.今後の展望
浸水被害の危険性を関係者や流域住民にわかりやすく伝えることは、流域治水施策を進めていく上で重要です。
今後は開発したシステムの機能を拡充し、さまざまな流域治水施策の地先から大河川までの効果を同一システム内で定量的に評価できるシステムを開発・実証する予定です。
当社とアジア航測は、「流域治水DXシステム」で、流域治水プロジェクトの具体化と実現による社会全体の水防災へ貢献することを目指します。