2024.07.03
技術・研究
今後、気候変動などによる洪水の頻発・激甚化に対応した高度なダム管理が求められる中で、各自治体ではダム管理の専門技術者が減少する傾向にあります。このような中、当社は、民間企業がダム操作支援や各種点検、維持工事設計などのダム管理全般を包括的に行う「ダム包括的民間委託」の事業スキームの試行・導入検討を展開しています。
わが国には治水、利水機能を有するダムが3,100基程度あります。ダムはダム本体等の土木構造、ゲート等の機械設備、制御処理設備等の電気・通信設備から構成される大規模な施設であると同時に、高度な維持管理や操作が求められます。
一方で、ダム管理の専門技術者やインフラメンテナンスの予算を確保することが困難になりつつあり、今後は気候変動等にも対応した安全かつ高度なダム管理を効率的に実施することが重要となってきます。そのため、当社では民間による「ダム包括管理」の試行・導入検討を展開しています。
1.「ダム包括管理」の導入メリット
ダムの安全性を確保し、機械・電気通信等の諸設備の機能を維持するためには日常的な維持管理や適時の更新が不可欠です。民間の管理チームによる複数ダムの包括的な点検、ダムサイトから遠方の中継局等までの包括的な設備点検等の「ダム包括管理」を導入することで、今後の安全かつ安定的なダム管理を継続することができます。
また、DXなどの最新技術を活用した洪水時の巡視や監視、AIを活用した流入量予測などダム操作の導入を通して、より高度かつ効率的なダム管理への支援も可能です。
2.各自治体やダムの実情に応じたスキーム検討
ダム包括管理の管理方式は、民間技術員の「常駐型」「半常駐型」「非常駐型」の中から、各ダムの実情に応じて選択します(下図参照)。管理方式選定後は導入に向けたロードマップを作成します。
当社では、先行して、現地対応、緊急時対応が可能で、導入コストが安価な「半常駐型」による包括管理を試行しました。その結果、巡視・点検の内容に応じて専門技術者を適時派遣することで、土木、機械、電気通信設備の点検管理を合理化、支援するなど、発注者の管理負担を大幅に軽減できました。
事業スキーム型のイメージ
3.今後の取り組み
今後は、導入検討を行った自治体(ダム)において、包括業務内容の改善、県内ダムでの包括管理の適用に向けた事業スキームの検討を行います。また、包括管理導入による定量的な効果評価手法の検討(B/C)、ダム管理の高度化や効率化に向けた新技術適用の可能性を検討してまいります。