2024.07.26
技術・研究
当社は、橋梁定期点検時における現場点検員の損傷程度判定を支援し、点検作業を効率化・高度化することを目的に、現場で撮影した損傷画像に対して、過去の膨大な橋梁定期点検情報(画像+文字情報)より類似事例を検索・出力するAIツールを開発しました。
1.背景
2012年に発生した中央自動車道笹子トンネルでの天井板落下事故を契機として、橋梁定期点検は5年に1度の近接目視による点検が2014年度から義務化され、点検に伴う時間とコストは膨大なものとなっています。
国土交通省が定める橋梁定期点検要領(以下、「点検要領」という)の損傷程度(a~e)判定は技術的判断が必要であり、技術者による判定のばらつきが懸念されます。このような背景から、点検の効率化や損傷程度判定作業を補助する新技術のニーズが求められています。
これまで点検画像にAI技術を活用する研究や製品は多数報告されていますが、点検要領の損傷程度区分に対応した判定までには至っていません。
2.技術の概要と特徴
以上の背景を踏まえ、当社では、国土交通省が公開している「全国道路施設点検データベース」における橋梁定期点検の現場で撮影した画像および部材や損傷種類などの付随する情報(諸元情報)をインプットデータとし、膨大な数の橋梁定期点検情報(各部材の損傷種類の画像と文字情報)より類似事例を検索・出力するAIツールを開発しました(図1参照)。
本ツールの特徴は以下のとおりです。
①画像をトリミングすることで損傷に着目した画像に変換
②線分検出機能を利用して近景画像と遠景画像を判定
③CNN(畳み込みニューラルネットワーク)により抽出した特徴量から類似度を算出
これらにより、点検要領の損傷程度の区分に対応した類似事例の出力を可能としました。
本ツールの活用により「点検員による損傷度判定のバラツキ防止」や「現場作業の効率化」が期待されます。
3.今後の展望
今後、現場での試行結果を踏まえて推定モデルの精度や使用性を向上させ、橋梁定期点検の効率化・高度化を図ります。また、橋梁定期点検における類似事例を検索するノウハウを活用し、様々な社会インフラの点検・調査等への展開を図ります。
本システムの処理イメージ