近年の急速な少子高齢化に伴い、社会基盤施設の維持管理を行う建設・土木技術者は減少の一途をたどっています。この問題を解決するため、当社では最新AI・ICTの研究開発を行い、建設・土木分野の業務の高度化・効率化に取り組んでいます。
現状、下記3分野に関するさまざまなAI・ICT研究を実施し、現場運用・実証実験を行うことで、精度向上、労働時間・コスト削減の面で現場に貢献しています。
1. 河川・砂防分野の研究例
(1) 河川空間の迷惑・不法行為検知AI
(2) 社会インフラ施工時の景観写真生成AI
(3) AIによる砂防施設の変状抽出
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2. 交通・都市分野の研究例
(1) 道路監視効率化に向けた車両の行動解析AI
(2) 橋梁健全度の予測AI
(3) AIによる高速道路伸縮装置の損傷診断
(4) オリジナルの3Dオブジェクト作成
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3. 環境・社会分野の研究例
(1) AIによる公共空間の利用状況把握
(2) AIによる人流軌跡検知、
(3) 電力需要量と太陽光発電量の予測AI
(4) IoTシステムの開発
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近年、災害の激甚化・頻発化が顕著になり、今後も気候変動による水害・土砂災害や、首都直下、南海トラフ地震による強い揺れ・津波等が想定されています。こうした激甚化する災害が発生した時でも行政機関や民間企業はBCPや災害対応マニュアルなどを円滑に運用し、確実に事業を継続することが求められます。
建設技術研究所では、行政機関や民間企業向けに、BCPや災害対応マニュアルなどをデジタル化し、リアルタイムで被害状況の把握や防災行動(タイムライン)を管理・共有・支援するシステムを開発しています。
本システムは、マニュアルの詳細確認、必要情報の自動収集、次の防災行動の自動通知、情報発信様式の作成などの機能を有しており、近年経験したことのない災害が発生した場合や災害対応の経験者が少ない場合でも、円滑な対応を支援します。
また、いざという時に有効に活用できるように、本システムには訓練モード、備蓄品管理といった平常時機能をそろえています。行政機関や民間企業の皆様が、組織の災害対応力の向上を図ることができるシステムとなっています。
BIM/CIMの普及や促進により、効率的で質の高い建設生産・管理システムの構築が期待されています。一方で、生産現場における3Dモデルの作成は、多大な時間・労力を費やしている状況であり、大きな負担となっています。
本研究では、道路構造物の橋梁、河川構造物の樋門を対象とし、設計ワークフローの初期段階から3Dデータを用いて、効率化、高品質化、高度化を図るための3D設計支援システムおよびワークフロー開発を実施しています。
建設技術研究所では、日本橋エリアに関するメタバース空間を作成することで、これまでの日本橋における活動をアーカイブ化するとともに、メタバース空間の作成方法やメタバース空間内の3Dモデルの設置・共有方法などといったVRに関する技術活用策(可能性)を探っています。さらに、今後のインフラ分野におけるVR技術についてのノウハウを蓄積することで、まちづくりや観光、施設の点検などといった業務と連携し、幅広い分野での可能性を探り、その場を広げています。
また、BIM/CIMなどといった3Dモデルの需要が高まるなか,発注者・受注者などの関係者でイメージを共有するための知見や、メタバース空間での展覧会・研修など、今後の需要を見込み技術を研鑽しています。
メタバースを活用すれば、どこにいても日本橋周辺を散策できます。例えば、舟で神田川や隅田川をめぐり、清洲橋や永代橋、南高橋、常磐橋といった橋の上を散歩しながら歴史に触れることもできます。アクセスするだけで世界中の人びとが日本橋の歴史や文化を学ぶ機会となり、新たな体験や経験、学びにつながるものと期待しています。
近年頻発している激甚化する災害への対応として、河川管理者による治水事業に加え、あらゆる関係者が協働で取り組む「流域治水」が進められています。推進にあたっては河川や道路、都市(まちづくり)といった複合的な観点を取り込んで氾濫原も含めた一つの流域として被害を軽減することが求められています。この際に、それぞれのインフラを組み合わせることで、より効率的な整備・活用が実現でき、相乗的な効果や新たな価値の創造につながる「多機能インフラ」の整備は、防災・減災や経済成長、地域社会の活性化につながるものと考えられています。
建設技術研究所では、ICT/DXを活用することで、二機能整備といった無駄の削減だけではなく地域活性化やエネルギー、脱炭素および温暖化対策といった環境への貢献、さらに遊び空間の整備や観光など新たな機能を加え、幅広く複合的な視点に立って多機能インフラの整備に向けた提言を発信していきます。
美しいインフラは、利用する人びとの心に豊かさを与えてくれます。1980年代以降、本州と四国を結ぶ3つの橋梁ルートや大きな構造物、そして小さな歩道橋など、より良いデザインを求めて挑戦的な橋が数多く建設されました。鉄道も、九州新幹線や北陸新幹線、北海道新幹線の駅舎のデザインは、斬新でその美しさを際立たせており、いまでは景観の一部として溶け込んでいます。そこには、技術者や建築家をはじめ工業デザイナーのコラボレーションによって生み出された創造的な作品ともいえるものです。
鉄道と橋の美学は、眺めや見た目、機能だけでなく、空間構成、空間的アイデンティティ、視覚的および感情的知覚の要素などといった「人間志向のデザイン」を満たすための美的デザインは構造よりもユーザーに焦点を当てる必要があります。
本研究では、インフラについて美しさを追求し、「風景と空間認識」「空間構成」「空間的アイデンティティ」「「視覚要素および感情的要素」「その他の要素」(機能の分布、ブランドデザイン、広告、サイン、アート、自然への配慮 )の5つの要素を挙げました。最近の研究では、審美的なデザインガイドラインの作成に焦点が当てられています。美的アプローチは、多くの例で説明されています。このガイドラインは、さまざまなインフラプロジェクトに携わる技術者にとって、実用的でわかりやすいリファレンスとして役立ちます。
わが国の人口減少とそれに伴う少子高齢化は確実に進行し、地方では過疎化による地域経済の縮小や行政サービスの低下などさまざまな課題が顕在化しています。都市においても、一極集中による自然災害時の事業継続リスクや狭小な生活空間、希薄な人間関係による孤立化など課題が山積しています。これらの課題は、行政コストや社会保障費の増加、税収減少の要因となり、将来、必要となるインフラの維持管理に大きな影響をもたらします。
一方、新型コロナウィルス禍を通して、テレワークなどが進展し、人工的で過密な都市から豊かな自然が残り、人やモノが混み合っていない地方へと移住する人たちが増えています。このような社会の変化を捉えて、地方と都市の双方の課題解決につなげていくことが期待されています。
本研究では、地方と都市がもつニーズとそれぞれがもつ資源や特徴を上手に活用して、双方の社会的課題を解決する新たな共助社会システム構築に向けた基礎検討を継続的に実施していきます。また、検討を通して新たなコンサルティング、事業開発に向けた可能性を調査するとともに、SDGsへの取り組みを推進します。
建設技術研究所は、一般社団法人日本橋浜町エリアマネジメントの正会員として、本社が位置する浜町・人形町地域の魅力向上のための活動を行っています。
地形・地質の成り立ちを分析したうえで、地域らしい風景の抽出、埋め立てられた浜町川の水辺復活の技術検討、スーパー堤防などの技術・法令を踏まえた浜町・隅田川一体構想の提案などを行い、これらの成果を、日本橋地域の過去・現在を知る小冊子『日本橋地域(浜町・人形町) 歴史・文化の再発見と新たな魅力創出』としてとりまとめました。
日本橋周辺では、首都高速道路の地下化などが脚光を浴びる一方で、まだ広く知られずに埋もれている地域資源・地域文化が残されています。その奥深い歴史、誇るべき文化の形成過程を、土木・まちづくりの視点から分析し、その隠れた魅力を解き明かすことにより、日本橋地域がより一層魅力あるまちとして持続的に発展するための可能性を提案することは大変意義があると考えています。
建設技術研究所の本社が位置している中央区・日本橋浜町エリアは、下町情緒が残る地域です。昨今は立地の良さが見直されて再開発が進み、定住人口・交流人口ともに増加傾向にあります。交通機関の連携、まちの活性化、地域資源の活用などによって、さらに地域の価値を高められるエリアです。
そこで、ICTを活用した日本橋浜町の課題解決と活性化を目指して、地域の企業と連携して「浜町スマートシティ構想(案)」を策定しました。さらに、緯度・経度・高さ情報を含んだ「高精度3次元基盤地図」をベースとして、今後さまざまな技術開発を行っていきます。構想の実現に向けて、さまざまな関係者と協議を進め、地域のさらなる活性化に寄与していきたいと考えています。
コロナ禍による急速な生活様式の変化により、将来の都市像の構築に向けた技術革新や、社会・都市構造の変革が求められています。
建設技術研究所は、コロナ災禍を契機とした新しい時代=ニューノーマル時代を見据え、地域特性や都市機能に応じた新たな都市づくりの方向性を分析し、自治体や学識経験者との意見交換を通じて新時代にふさわしい施策、その施策の検証方法など実効性の高い都市施策に関する研究を行っています。
これからも、新たな都市づくりの方向性と地方自治のあり方から将来の国土を読み解き、コロナ災禍で得た知見等を踏まえたニューノーマル時代の新たな都市づくり(市町村の姿~国土の姿)に関する提案を行っていきます。
近年、都市部の子どもたちは自然体験活動の機会が減り、心身の育成にも影響が出ている可能性が指摘されています。その解決の場として、都市部から最も近い自然空間の一つである水辺が期待されていますが、これまでの水辺の整備では、そのような子どもの成長の視点は考慮されていませんでした。
本研究では、子どもの水辺体験活動の観察から、水辺での遊びを通じて課題解決力や創造力が育まれることを明らかにしました。またそのために必要な水辺環境条件を、現地調査や小学校の生徒・保護者へのアンケートにて明らかにしました。
これらをもとに、水辺を中心とした子どもを育むまちづくりの留意点、子どもの視点から考えたインフラ整備のあり方を体系的にとりまとめ、子どもたちがワクワクし、自ら学び成長していくという意味を込めて「プレイフルインフラ」と名付けました。本研究の成果は広く普及されるよう書籍にとりまとめていく予定です。
東日本大震災以後、再生可能エネルギーに対する注目は高まりましたが、日本においてすでに130年に及ぶ歴史を有し、急峻な地形や豊富な降雨量など水力発電にとって有利な条件を抱えているのにも関わらず、現在、水力発電に対する社会の理解はかならずしも十分とは言えません。
そこで、角哲也京都大学教授を国土文化研究所の客員研究員にお迎えし、角哲也氏を座長とする「水力発電価値評価研究会」を立ち上げ、水力発電についての電力としての役割はもちろん、環境や地域社会に与える面での価値にも着目し、「水力発電の恵みを次世代にひきつぐための3つの課題と10の解決策」として提言しました。
研究の成果は「今こそ問う水力発電の価値~その恵みを未来に生かすために~」として書籍化を行い、一般社団法人ダム工学会著作賞を受賞しました。本書は、国内の水力発電の位置づけはどうあるべきか、水力発電の可能性はどの程度あるのか、既存のダムの有効利用を含めた水力発電の開発・推進方策はどうあるべきかについて、研究会での議論をもとにとりまとめたものです。
「人間中心設計」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?通常は、製品のデザインに利用されている手法です。
あるサービスの構想段階から、そのサービスの利用者(ユーザー)およびユーザーの要望を明確にして、要望に合ったものを設計し、満足度合いを評価するプロセスを組み込んだ設計手法のことで、ユーザーの要望が満たされるまで、これを繰り返します。この手法を、インフラの整備に使えないかと考え、研究がスタートしました。
目指すところは、設計そのものに人間中心設計の手法を用いることであり、今回はその初期段階であるユーザーニーズを把握する調査に、人間中心設計の手法を用いることとしました。成果として「ユーザー調査法マニュアル」を作りましたが、マニュアルの作成にあたっても、人間中心設計の手法を用い、全社員の特性を網羅する7名のペルソナ(架空の人物像)を設定し、各ペルソナがマニュアルを利用することを想定しました。
マニュアルは、技術部門のみならず、管理部門、営業部門などの社員に対しても有効なものであり、日々の仕事にイノベーションを起こすことが可能と考えています。
建設技術研究所は、水辺を活かしたまちづくりについて研究しました。1590年の徳川家康による江戸入城以降、江戸は世界でも有数の水網都市として発展しました。これらの河川や運河は、その多くが明治以降に埋め立てられてしまいましたが、近年、「かわまちづくり」や「ミズベリング」など、まちと水辺の関係性を再構築する取り組みが各地で行われています。
本研究では、東京の隅田川東岸に位置する江東デルタ(江東区、墨田区)を対象に、水辺の効用や利活用の再認識、水辺文化の再発見、かわとまちが一体になった水辺コミュニティの再構築を通じた22世紀の水網都市の将来像を提案しました。
研究成果は、冊子「水網と、暮らしと、豊かさと。」としてとりまとめました。本冊子が水辺を活かした豊かな暮らしについて関心のあるすべての方々と、都市の将来像を語り合うきっかけとなることを願っています。
日本は、世界遺産をはじめとして、国宝、重要文化財などの文化遺産を数多く有しています。国、関係自治体、文化財所有者などの努力により、わが国の文化遺産は保全されてきましたが、それらの対策は通常の火災や風水害への対策であって、大規模地震で発生する地震火災などに対しては十分とはいえない状況です。近い将来、東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震などの大規模地震の発生が想定されています。文化遺産は学術的価値のみならず、観光資源としても価値が高く、地震火災から文化遺産を含む周辺地域の焼失を防ぐことが、防災まちづくりの観点でも重要な課題となっています。
本研究では、文化遺産の価値を定量的に評価する手法について検討を行い、京都の東福寺地区をケーススタディとして費用対効果の検討を行いました。研究の結果、文化遺産を含むまちづくりを推進する上で、重要となる文化遺産を含む地域全体での防災対策事業の費用対効果が十分に期待できることを示しました。また、研究成果として、防災まちづくりの事業化マニュアルについてもとりまとめました。
社会の変化に伴い、建設技術者がそのモチベーションを維持することが難しくなる場合がみられます。それはそのまま組織の生産力や企業価値に直結していきます。
そこで建設技術研究所は、生きがいに関連する人間独自の精神プログラムを把握し、生きがいに大きく影響するモチベーションについて、内発的動機付け理論がよりよい問題解決を導く一方、統制は創造性や柔軟性を必要とする課題解決に妨害的な作用をもたらすことなどを整理しました。
また、複数の分野の技術者を事例として、モチベーション向上をもたらした環境の特徴と技術者のモチベーション向上を成し得るポジティブな環境形成について考察しました。
技術者の生きがいやモチベーションの理論を採用することで、組織の生産力向上や企業価値向上に寄与するのみならず、建設生産システムを検討する上でも重要なアプローチとなります。このような既往研究は数少ないのが現状です。今後は、具体的な実践により効果の検証を行っていきます。
遠い未来の夢のような話。もしかしたら、月面基地建設はそう思われているかもしれません。実は月面基地建設を含む月面探査は、米国などを中心に現実のものとなるよう進められています。日本も月面探査に関する技術開発が進められ、宇宙産業は成長分野として大きく期待されています。
そうした大きな流れの中で、建設技術研究所では2018年に研究チームを立ち上げました。研究内容は、少人数の常住拠点をつくる月面探査の初期段階ではなく、初期段階(入植期)から開拓期、完成期への移行のプロセスを踏まえた「基地の立地」や基地計画に必要な「都市計画」、「エネルギー」、「食糧・資源循環」、「社会システム」といった建設コンサルタントらしい幅広い視点から研究を行っています。
本格的に月面に「まち」をつくっていくためには、総合的な検討が必須です。今後さらに研究を深め、日本の月面探査や宇宙産業の育成に貢献していきます。
インフラは、古くから先人の知恵と優れた技術で整備され、地域の文化を築いてきたといわれています。長い時間をかけて道路や河川などといった社会資本(インフラ)が整備されたことによって、私たちは豊かな暮らしを送ることができ、災害が発生しても生命や財産を守ってくれています。また、遠距離でも交流が生まれモノが運ばれ、今までその地域になかった新たな文化が醸成されているのです。
今回の研究では、実際にインフラの整備が、地域ごとに異なる文化とどのように関係し現在に至っているのか、また地域の人びとにどのように貢献してきたのかを身近な「食文化」に焦点をあてて解き明かしました。「海がないのに道路整備によってすし屋が人口比で日本一」、「かんがいや治水によってぶどうとワインの生産量が日本一」といった独自の食文化をもつ山梨県を取り上げてインフラ整備と文化の形成との関係性を見出しました。
今後は、食文化に限定せず、少子高齢化や多様な価値観といった社会現象を踏まえ研究を進めていきます。もしかしたら、あなたのまちが研究ターゲットになるかもしれませんよ。