RisKma流域水循環予測情報サービス
36時間先まで予測する水災害リアルタイム地図情報サービス 『RisKma』(水災害リスクマッピングシステム)は、近年頻発するゲリラ豪雨や集中豪雨などを予測し、それに起因する水災害の発生リスク情報をリアルタイムで発信するWebサービスです。一般ユーザーの方でも、ブラウザなどでアクセスしていただくことで、マップ上に表示される雨量予報や浸水リスク、ゲリラ豪雨予報などをご覧いただけます(無料)。現在の機能では、36時間先までの雨量分布予報が可能です。また、累加雨量分布を5分間隔で配信するため、現在の状況がリアルタイムで把握できます。浸⽔リスクに対しては、ゲリラ豪⾬による内⽔氾濫のリスク情報や、バーチャル⽔⾯マップの表⽰があります。内水氾濫は、リアルタイムかつ60分先までの浸水リスクの解析・予測情報を、全国250mメッシュで5分おきに提供しています。バーチャル水面マップでは、任意の場所の標⾼と、近隣のリアルタイムの河川⽔位を拡張した⽔⾯との標⾼差が表現されます。ゲリラ豪雨予報については、関東・北陸・中部地域を対象とし、2~3時間先までの豪雨情報を表示します。なお、これらの水災害リスクが発生した際には、情報をメールで配信するサービスも同時に展開。ユーザーに対して、リアルタイムな内水氾濫・ゲリラ豪雨リスクを伝えます。 流域水循環モデルの構築と自治体・法人向けサービス 当社では、西日本の四国全域を対象として流域水循環モデルを構築し、1ヶ月先までの渇水予測情報を提供できるシステムを構築しました。流域水循環モデルは、分布型流出解析モデルとUNSAF地下水モデルをカップリングしています。これにより渇水リスクの情報提供が実現。水資源の管理者による効果的な渇水対策の実施に貢献します。現在、このプラットフォームを発展させて、洪水時だけでなく平常時・渇水時の施設のオペレーションや河川利用に役立つ情報を提供するシステムを開発しています。そのほか、当社では自治体や法人向けに、豪雨・洪水・内水対策に対する水災害対策コンサルティングや、RisKmaの水災害関連データの提供を行っております。洪水浸水想定区域図や営業拠点登録、洪水警戒危険度分布、土砂災害警戒地域、数値データによる情報配信など、幅広い機能をカスタマイズしてご活用いただけます。
AIを活用した未来画像予測による防災・減災力の高度化
【未来画像予測技術】近年多発する自然災害 近年、世界的な気象変動の影響等により、これまでにない規模の豪雨や台風による自然災害が多発しています。例として、2019年10月に発生した台風19号は、観測史上1位となる記録的な大雨をもたらし、阿武隈川や千曲川等の大規模河川の氾濫・決壊が相次ぎ発生しました。その結果、死者105人、行方不明者3人(2020年11月時点)という、21世紀の日本における最悪の被害をもたらしました。今後も同様の台風やゲリラ豪雨の発生が懸念されます。これらの災害に備え、国土交通省や自治体等における防災担当者は、河川や道路の監視カメラの映像を常時監視し、破堤や土砂崩れの発生後に瞬時に対応しています。一方で、災害発生後の対応では人命救助が間に合わないケースもみられます。こうした問題に対処すべく、当社では、AI(人工知能)技術の一種であるディープラーニング(深層学習)を用いて、監視カメラ画像が将来どのように変化するかを予測する未来画像予測技術を開発しました。 数時間後の監視画像を予測し、防災・減災に貢献 ディープラーニングの一種である、CNN(畳込みニューラルネットワーク)、RNN(再帰型ニューラルネットワーク)、GAN(敵対的生成ネットワーク)を活用し、未来画像予測技術の開発研究を実施しています。その一例として、河口に形成される砂州の状態画像を3時間後まで予測するAIモデルを開発しました。このモデルでは、砂州の高さの変化や、砂州の崩壊の一部を適切に予測する精度が得られています。また、Google渋滞情報画像を基に、5分後までの渋滞画像を予測するモデルも開発中です。これにより、災害発生後の緊急車両の通行経路確保等に貢献することが期待できます。その他、豪雨時の破堤や、気象予測画像を補正する技術等の開発も進めています。今後、これらの技術を社会実装することで、防災・減災対応を高度化し、災害発生時における国民の安全・安心な生活の確保に貢献できるでしょう。
AIを活用した活火山監視の効率化
【AIで活火山監視を効率化】活火山監視の重要性 日本は環太平洋火山帯の一部に位置し、111箇所の活火山が存在する国です。この数は、世界の約7%を占めており、ひとたび噴火すると、噴石、火砕流、土石流等の噴火事象により甚大な被害が発生します。記憶に新しいものでは、2014年の御獄山噴火が挙げられます。水蒸気爆発によって引き起こされた噴火により、死者は58名、行方不明者5名(平成27年11月時点)という、国内で起こった戦後最大の火山災害でした。今後、いつまた同様の火山災害が起こるかは予測がつきません。そのため、定常的な観測・監視により噴火の兆候を迅速に察知し、対策を取ることが重要です。当社でも火山監視システムの開発には従来から注力していました。たとえば、曇天や降雨等の悪天候時であっても山頂部が見えやすくなるよう、電源・通信ケーブルの制約を受けない太陽電池+無線LANで構成された自律型観測装置を開発。対象火山の近くに設置することで、監視に対する課題を解決しています。しかし、火山噴火後に警告等を発報したとしても、逃げ遅れが発生する可能性は否めません。こうした問題に対処すべく、当社では、AI(人工知能)技術の一種であるディープラーニング(深層学習)を活用した、「噴火事象検出技術」と「ノイズ除去技術」を開発しました。 CNNを用いた「噴火事象検出」と「ノイズ除去」 気象庁が活火山監視の効率化を目的に、常時観測・監視を実施している50箇所の活火山の一つである焼岳を対象にしました。ディープラーニングの一種であり、高度な画像解析能力を有するCNN(畳込みニューラルネットワーク)を活用し、噴火事象(噴煙、土石流等)を高精度に検出するモデル、並びに火山の監視を阻害する雲や雨等のノイズ除去モデルが構築できました。その結果、活火山監視の効率化にディープラーニングが有効な技術となり得る可能性を示すことができました。開発したAIは小型PCに実装され、現在も監視現場での実証実験が続けられています。技術が実用化する日を迎えれば、AIによる防災・減災対応の迅速化が実現します。噴火が起こる前に地域住民へと警戒・避難情報を発報できるため、防災・減災に大きく寄与するでしょう。なお、現在の火山監視作業は、24時間でありながらも担当者が実行しているケースは少なくありません。こうした人員の負担削減と人件費削減にも、AIを用いた火山監視は期待が持てます。
下水道雨天時浸入水検知システムの開発
費用も時間も大幅削減〜特許:下水道雨天時浸入水検知システムの開発 大雨などが降ると下水道管路施設から水が溢れ出すことがあります。原因はさまざまですが、たとえば下水管の老朽化によってヒビやすき間ができていたり、マンホール蓋に破損があったりする場合、そこに雨天時浸入水(※)が流れ込む事態が引き起こされ、前述の現象が起こるのです。※雨天時浸入水とは、分流式下水道の汚水管に雨天時に浸入する水や、地下水位以下に埋設された汚水管に浸入する水などのこと 雨天時浸入水の放置は多くのデメリットを生み出します。たとえば計画量以上の水が流れ込んでしまうと、浸水被害やポンプ場に大きな負荷がかかります。さらに、土砂堆積などが雨天時浸入水と一緒に引き込まれると、浚渫費等の管路施設維持管理の増大にもつながるでしょう。そのほか、市町村で増大した雨天侵入水によって流域負担金の増加も考えられます。雨天時浸入水によって下水道処理場への流入量が増えると、それを処理するための費用も大きくなり、結果下水道経営の圧迫にもつながります。しかし、従来の流量計や水位計を用いた下水道の雨天時浸入水検知には高額の調査・分析費がかかるため、調査範囲を限定するしかありませんでした。こうした背景を踏まえ、当社は雨天時浸入水を安価で迅速に検知することを目的に技術開発をスタートさせました。 音響データによる機械学習モデルで雨天時浸入水を予測・検知 雨天時浸入水の検知を行うために、当社は音声データに着目しました。具体的には、流水音を含む音響データの音響特徴量パターンや、無降雨時の流水音を含む音響データと、無降雨時とは異なる条件下での流水音の音響データ、その一方もしくは両方から抽出された音響特徴量パターンなどを、機械学習を使いモデル化。観測データと照合させ、雨天時浸入水の有無をAIなどを使い予測・検知します。導入後、調査及び分析費用が従来比50%程度削減できたうえに、AIを用いることで分析時間も大幅に短縮されました。この下水道雨天時浸入水検知システム研究の成果は、国土交通省の実証事業で評価を受け、特許査定を得ることもできました。 特許番号 特願2018-207773発明名称 不明水検出装置、不明水検出方法、プログラム及び不明水検出システム※国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同特許 ◆第5回インフラメンテナンス大賞「特別賞」(国土交通省)受賞◆電波タイムズ紙(2022年3月11日 金曜日 朝刊)で紹介されました(PDF)
日本橋地域の新たな魅力創出プロジェクト
土木・まちづくり視点からの地域貢献! 東京・日本橋地域の新たな魅力創出に向けて 建設技術研究所は、一般社団法人日本橋浜町エリアマネジメントの正会員として、本社が位置する浜町・人形町地域の魅力向上のため、土木・まちづくり視点からの地域貢献活動を行っています。例えば、地形・地質の成り立ちを分析したうえで、地域らしい風景の抽出、埋め立てられた浜町川の水辺復活の技術検討、スーパー堤防などの技術・法令を踏まえた浜町・隅田川一帯構想の提案などを行い、これらの成果を、日本橋地域の過去・現在を知る小冊子『日本橋地域(浜町・人形町) 歴史・文化の再発見と新たな魅力創出』としてとりまとめました。日本橋周辺では、首都高速道路の地下化などが脚光を浴びる一方で、まだ広く知られずに埋もれている地域資源・地域文化が残されています。その奥深い歴史、誇るべき文化の形成過程を、建設技術研究所らしい土木・まちづくりの視点から分析し、その隠れた魅力を解き明かすことにより、日本橋地域がより一層魅力あるまちとして持続的に発展するための可能性を提案し続けています。 日本橋地域魅力復活プロジェクト 2018~2019年の「日本橋地域特性研究」のなかで、「日本橋地域魅力復活プロジェクト」と題した章を設け、日本橋の魅力を再発見する取り組みを行いました。 ■景観・観光スポット発掘の調査研究日本橋をさまざまな角度から捉え、最終的には「日本橋風景10選」をピックアップしました。この選考前には、日本橋地域らしさの評価や、日本橋地域らしい風景の抽出などを行っています。 1.浜町公園(清正公寺)2.水天宮3.日本橋七福神(小網神社ほか)4.トルナーレ広場(新しい地域交流拠点)5.浜町緑道(浜町川復活)6.清洲橋7.大観音寺に続く町並み8.蛎殻町公園(旧有馬邸)と有馬小学校(元復興小学校)9.明治座10.隅田川プロムナード ■「浜町川水辺復活」プロジェクト(案)浜町川のせせらぎの復活は、景観・環境・まちづくり等の観点から意義があるという意見のもと、ケーススタディとして日本橋浜町の浜町緑道での活動を検討しました。コンセプト案:「浜町を象徴するまちの背骨として、浜町川としての歴史を感じる上質な歩行者緑道空間を形成する」 なお、「日本橋風景10選」は2018年に発案された企画です。同様に、2019年は「浜町川水辺復活」プロジェクトを発案し、次年度につなぎます。
物流研究会について
災害時やパンデミック時に重要性がさらに高まる物流について、道路交通計画や防災計画の視点から研究 当社は、苦瀬博仁研究顧問(東京海洋大学名誉教授)のご指導のもと、都市・地域の発展や災害時、パンデミック時に欠かすことのできない物流の重要性や必要性から道路交通計画の方法論ならびに災害時に備えたインフラストラクチャーやライフラインの防災計画などを研究する物流研究会を定期的に開催しています。これまでの主な研究成果は、苦瀬研究顧問の監修のもと当社社員が執筆した書籍「物流からみた道路交通計画」(大成出版社:2014年2月発行)、ならびに当書籍に新たな知見を加えて苦瀬研究顧問から当社社員にわたりリレー形式で執筆した輸送経済新聞のリレー連載「物流からみた道路交通計画(全12回)」(2015年9月~2016年6月)などがあげられます。また、これらの研究成果については、社内外でセミナーを開催するなど情報発信も積極的に行っています。ますます深刻化する多様な課題を解決すべく研究に取り組んでいます。 新聞連載「物流から見た道路交通計画」